桜降る代の雑語り

ボードゲーム「桜降る代に決闘を」についての雑文を投げます

ユキヒオタクの戯言

※フレーバーの話なのでユキヒ様の使い方とか期待した方はごめんなさい。オタクの戯言に付き合ってくれる心優しい方は、明日からユキヒ様を宿せば決闘に勝てます。ユキヒ様を宿しましょう。

 

  どうも、幼女です。

  はらりゆきが強化されてからユキヒ様の使用率がはっきりと上がりましたね、ユキヒ様のミコトとして嬉しい限りですが、新幕最初期から存在していながら一度もカード修正を受けていないという特殊性が失われたことに何とも言えない寂しさも覚えています。

  ところでユキヒ様の通常札に、えんむすびというカードが存在しますね?公式メガミ紹介にもある通り、ユキヒ様は縁と人間関係を象徴するメガミであるため、えんむすびはきっと彼女の生き様を表すようなカードに間違いありません。

  肝心なカード効果は以下の通り。

納2

【展開時】間合→(1)ダスト

【破棄時】ダスト→(1)間合

【常時】あなたの傘が開いているならば、このカードの矢印は逆になる。

  展開前に参照する必要があるため、付与札には珍しい【常時】効果を持っていたり、他には二幕虚魚しか持っていなかった「矢印は逆になる」効果を持っていたりと、テキストだけでも面白いカードです。

  しかし、ユキヒ様に慣れていない方からすると、効果の有用性がよくわからないカードだと思います。

  展開時に一歩詰めて破棄時に一歩下がるだけなら、風舞台の方が便利そうです。展開時効果だけに注目しても、傘を閉じてる時は前に詰め、開けている時は後ろへ下がるという、ユキヒ自身の攻撃と噛み合わないちぐはぐなカードです。

  このカードの真の効果は、展開したターンの終了フェイズ時に傘を開閉することで生きてきます。

  傘がじた状態で展開しに一歩詰めて、傘をけて次のターンになると破棄時効果の矢印が逆になっているため、更にに一歩詰める事ができます。

  傘の状態が逆であれば、としながら二歩下がることができます。

  するとあら不思議、間合を二歩動かした上で、その間合が得意な方に傘を切り替えているではありませんか。つまりえんむすびは、もう片方のユキヒ様にバトンタッチする札だったのです。

  前に移動する場合は、例えばつきさしを当てるサポートをする場合ですね。開始フェイズに一歩詰めるので、相手が回避しようと思うと後退も入れて間合4まで下がらなければいけません。間合2からふりはらいで間合1、それでできたダストで展開すればスムーズに間合0に入れるのも美しいです。

  あとは、傘開け状態で傘の開閉を行わない場合でも、ダストが2以下であれば、えんむすびを使用しても展開時の後退効果を踏み倒し、相手のターンになってもダストを一個保持したまま纏いを阻害でき、相手の離脱を打ち消してクリンチ戦術の助けになります。

条件のない-/2は現時点(シーズン8)においてもこの一枚しか存在しない

  後ろに移動する場合はしこみびと組み合わせて使用するレンジロックが特に強力でしょう。しこみびで傘を開けて、えんむすびで一歩下がりつつ傘を閉じ直して次のターン更に下がります。はらりゆきが間合6でも使用できるようになったことや攻撃後に集中力がもらえるようになったことなど、ユキヒ様のレンジロックはますます強くなっています。

儚くも強か

  この令和の世において、えんむすびは決してカードパワーが強い方ではありません。しかし間合操作を得意とするユキヒ様らしく、使い方によっては相手へのこの上ない強力な束縛となることでしょう。(他のメガミとのシナジーもあったりなかったりしますが、ここでは割愛します)

 

  このカードに活用法があることはわかった、でももう一人の自分にバトンタッチと言っても、それは結局自分では?ならなぜえんむすびという名前が冠されているのか?それについては、ユキヒというメガミが生まれた経緯から説明する必要があり、またそれに関連して、チカゲの物語にも触れなければいけません。

  ふるよにを始めたばかりの頃、色んなメガミに触れていく過程で皆さん一度は思ったことがあるはずです、「なんで縁のメガミが二重人格?」「縁と死ってどういう組み合わせ?」と。そういうもんかぁと受け入れる人もいるかもしれませんがよくよく考えてみれば確かにちょっと首を傾げちゃいそうな疑問です。

  もったいぶらずに言っちゃいますと、このユキヒというメガミは元々「ユキノ」と「ホロビ」という二柱のメガミだったのです。

  ホロビは死を象徴するメガミであり、公式小説第一作『桜降る代の神語り』においては、人間だった頃のチカゲ──闇昏千影が宿しているメガミとして、間接的に登場しています。

  千影は過去のトラウマからホロビに強く依存しており、そしてホロビもまたその権能故に一般人から忌み嫌われ、そんな中千影に存在を求められたことで、千影に依存するようになります。

  生まれの忍の里から離れ、古鷹に身を置いていた千影だが、偶然の出会いにより桜降る代を征服する野望を持つ男・瑞泉驟雨に目をつけられます。驟雨は千影を暗殺者として雇い、当時最強と呼ばれていたミコト・龍ノ宮一志の暗殺を依頼します。

  千影は元々、ホロビの権能と毒を扱う自身の技術と知識を合わせて、相手が誰であろうと──それこそメガミであろうと殺すことのできる、死そのものが形になった毒「滅灯毒」を作り出していた。それを使って、千影は龍ノ宮一志の暗殺に成功します。

  この時の戦いは、公式から無料公開されている物語セット『龍ノ宮一志暗殺計画』で再現され、実際に遊ぶことができます。

刹那の判断が生死を分かつ

  その後も千影は驟雨の下でしばらく働いていたようですが、それが千影とホロビにとっての災難の始まりでした。

  驟雨に協力していたメガミの一柱・クルルはその当時、ミコトとの繋がりを通してメガミの力、ひいては神座桜の力を強引に引き出す「神渉」の研究をしていた。ホロビとの共依存により強固な繋がりを持つ千影は、格好な実験体だったのです。

  その結果、千影からホロビの力は奪われ、千影はホロビとの繋がりを断たれた状態になります。それからというもの、ホロビを奪い返す算段も、信用できて頼れる人も持たない千影は一人放浪することになります。

  そしてここに登場するのが千影の弟、闇昏千鳥です。(そう!なんとチカゲは姉属性を持っていたのです!)

  過去のトラウマと誤解から里を捨て行方不明になっていた姉を探す千鳥は、僅かな手がかりを辿って姉を追い続けていた。そしてその道中で、雪と名乗る謎の占い師と出会い、彼女から縁を司るメガミの加護を授かってみては?とアドバイスを受けます。この雪という女性こそ、縁のメガミ本人である「ユキノ」でした。

  ユキノの助力により、千影と千鳥は無事再会を果たし、ひと悶着あった後に和解して、共にユキノを宿すようになります。そして千鳥とその知人である揺波、サリヤたちの助力を得て、ようやく千影はホロビを取り戻しに瑞泉の地に向かいます。

ユキノの象徴武器・傘を使っていたころの千影

  長く苦しい戦いを経て、クルルを倒しホロビが封じ込められていた神渉装置を解体してついに再会を果たすが、ホロビは深い眠りについており、目覚めることはなかった。そこに現れたユキノによると、神渉装置によって神座桜の世界に存在する己が本質と引き離され、更にメガミとしての力を消費され続けたホロビは既に消滅寸前になっていました。

  自力ではもう神座桜の世界に戻れなくなっているホロビを、あちら側に通じる扉を強引にこじ開けて送り返そうとユキノは提案します。神渉装置の残骸やサリヤの乗騎ヴィーナのエネルギーを利用し、更にホロビと深い縁を持つ千影やメガミになりたてで神座桜と強い繋がりを持つサイネ、縁を司るユキノの力を使って、ホロビは己の本質と合流することに成功します。

  しかしそれでも、ホロビの状態が好転することはありませんでした。もうどうしようもなく弱りきっていたのです。

  そしてユキノは決断します───縁を、「心の繋がり」を司る自分の力を使って、ホロビの人格を自分の中に受け入れます。

  ──こうして、「ユキノ」と「ホロビ」は、一柱のメガミ「ユキヒ」に生まれ変わったのです。

「うら」とは「心」と書き、二つの心が、一つに交わる。

  ……長々とユキヒの誕生経緯について語ってきました(公式小説を整理しただけともいう)が、つまり私が言いたいのは、多くのユキヒのカードが閉と開で完全に効果が二分されている中で、傘を切り替えながら使用することに意味があり、お互いへのサポートを行う「えんむすび」は、まさに「縁結び」の力によって一つに繋がったユキノとホロビを象徴できるカードということなんです。長々と説明した割に結論が薄い

 

  ところで、傘を切り替えながら使うことに意味があるカードってもう一枚ありますね?

  そう、このカードです。

宇宙一好きなカードかもしれん

  このカードはBakaFire氏の過去の記事によると、

 「かさまわし」はユキヒをより楽しいメガミにするために作られています。傘は自分の戦略に合わせ、開閉を固定したほうが安定します。しかし「かさまわし」が開閉に報酬を与えることで、開閉してオーラを得た方が良いのかというジレンマが生まれるのです。

 

楽しき代のためカード調整より

  とのことらしい。つまりゲーム性の面からデザインされたカードですね。

  しかし私はこのカードに、ユキヒ様の精神性を表すフレーバー要素を見出しました。(怪しげな持論を繰り出す不審者)

  前提として、ユキヒ様(正確にはユキノ様)は精神、あるいはもっと俗な言葉を使えばメンタルがとんでもなく強いです。自分とは異なる存在の人格と一つの身体を共有し、それで普通に生活しているのですから明らかです。

  そして危機が迫る時に冷静に自分ができる最善な行動を即座に選択し行動できる、強い女性でもあります。その証拠に、

  シンラの力によって狂気に陥ったザンカ(揺波が宿す禁忌のメガミ)が現れた時、彼女と揺波の間に結ばれている縁を見抜き、微力でありながら一人と一柱がしっかり再会できるように手助けしたこと。

  海の向こう、サリヤの故郷・ファラ・ファルードにてサリヤが貴族のしがらみに囚われ、自由を奪われそうになった時、神座桜から遠く離れた異郷の地でも自分の力を発揮して、頼るべき人をすぐに特定しサリヤを救うために動いたこと。

  などなど、彼女が裏で手引きしたおかげで事態が好転した実績は多くあります。千影と千鳥を引き合わせたのも、もしかしたら瑞泉の侵略という一大事を前に彼女が縁から読み取った最善の一手なのかもしれません。

  では、彼女のそんな一面がゲームに表れたことはあるのでしょうか?一見するとなさそうです。しかしこのカードにこそ、私は彼女の強靭な精神を見出しました。そう、無限焦燥です。

大好きなので2回も掲載しちゃいます!

  皆さん御存知の通りふるよにのゲームシステムには焦燥ダメージというものが存在します。これは「カードを引く時山札にカードがなければ、引けなかった枚数分1/1のダメージを受ける」というものです。ユキヒとは関係ない記事ですが、BakaFire氏の過去記事によると、

 ここではもう一点、本作におけるドローのイメージについても話させて頂きましょう。カードゲームにおいては、山札は知識、手札は思考に例えられることがあります。ゆえにカードを引くのは知性的な動作とみなされやすく、それは一見してヒミカのイメージとはかみ合いません。

 

 しかし本作でドローはヒミカ的です。なぜか。それは本作が決闘のゲームであり、それゆえに時間の概念がより刹那的だからです。モンスターを召喚して指揮するゲームと、刀で切り合うゲームを比べて、1ターンの時間が同じであるはずがありません。ゆえに、手札という思考もまた、より瞬間の思考になるのです。

 

炎天は熱く熱く輝く(後篇)より

  とのことです。瞬間的と長期的という違いはありますが、ふるよににおいても手札は思考に結びつけられるようです。

  ではそんなゲームの中で、「カードを引きたいのにカードがない」という状況は、当然「必死に思考を巡らせたがなにも思いつかない」状況です。だからこそ、カードを引けない時のダメージは「焦燥」と名付けられたのでしょう。

  そしてかさまわしを使えば、そんな「焦燥」に無限に耐え続けることができます。たとえお互いもう相手への有効打がなくなり、手も足も出ない状況になったとしても、諦めずに頑張り続ける「かさまわし」に、私ははっきりとユキヒ様の姿を見ることができます。

  ……っと、ここまで書いて初めて実は無限焦燥できるカードが他にもそこそこあることに気づいたのは内緒です。壮語ぐらいだろと勝手に思ってました

 

  ……なんか長々と2枚のカードについて語ったけどどっちも結論が微妙になっちゃいました。この記事ボツでは?それでも私はこの2枚のカードが大好きです。

  とまあ書きたいことだけ書き散らしといてなんですけどこの記事多分なんの役にも立ちません。ここまで付き合ってくれた読者諸君はまさに聖人君子、ユキヒ様にも負けない慈しみの心を持っているに間違いありません。そんなあなたならば、明日からユキヒ様を宿してみると、連戦連勝できるかもしれませんよ?ということで、ユキヒ様を宿そう!

 

画像素材:

https://main-bakafire.ssl-lolipop.jp/furuyoni/na/rule.html

(ふるよにコモンズ/BakaFire,TOKIAME)

神語りの決闘録②─ヤツハvs遥原夕羅

※この段落は前回の記事とほぼ変わりませんので読み飛ばしても大丈夫です

 

  はじめましての方ははじめまして、そうでない方はいつもお世話になっております、幼女です

  公式小説、読んでますか?普段宿しているメガミたちや、新しい拡張に登場する予定のメガミやそのカード、そして我々と同じミコトとして桜降る代に生きる人々の物語など、ふるよにの世界観をふくらませてより魅力的にしてくれる素晴らしいコンテンツです。

  しかしこの公式小説、中々分量が多くて読むのは大変ですよね。皆さんの中にもきっと「興味はあるけど、読む時間/気力がないなぁ」という方もいるはずです。

  そこでこの記事シリーズでは、公式小説の中でも特に「決闘」を描写したシーンを抜き出して「ここの描写はこのカードのことなんじゃないか?」みたいなことを勝手に解説していきます。あくまで一読者の考察(という名の妄想)であるため必ずしも正しいわけではありませんが、ふるよにの物語に触れるきっかけになれれば嬉しいです。

 

ヤツハvs遥原夕羅(『八葉鏡の徒桜』エピソード1-6:山城ではじめての〇〇(後篇))

  あらすじ:クルル、ハツミと共に瑞泉を目指す道中、三柱は山城を訪れます。そこでメガミ・ミズキとメガミ・コダマと出会う。なんやかんやあってミズキとコダマの代理戦争としてヤツハと、コダマを宿すミコト・遥原夕羅が決闘を行うことに。

 

  ヤツハが初めて桜花決闘を行うシーンです。作中における現代での桜花決闘の在り方と、自身の力へのはっきりとした敵意に初めて触れるシーンでもあります。二回連続とかこいつさてはヤツハ大好きだな?

  この決闘では現在の新幕ふるよにでまだ未実装のメガミ・コダマの力が使われていますが、なんとこの戦いを再現した物語セット(専用カードを含む構築済みデッキで戦うセット)が公式から無料公開されています。本記事ではこの物語セットに基づいて解説していきますので、興味がある方はぜひ試しに遊んでみてください。

  物語セットはこちらから。一番下の「物語セット目録」にある「物語9:はじめての代理戦争」でダウンロードできます。

  また、この物語セットに使われているミズキやコダマのカードは新幕ふるよにに実際に実装されてるカードと効果が異なります。そういったカードを解説する際は物語セットの画像を使用します。

  それでは解説に移りましょう。

 どこからか、不思議な力が流れ込んで、身体に通っていく。そうとしか説明できない感覚が桜花決闘に臨むヤツハの意識を満たしていく。
 その力は初め、どこかよそよそしく感じられた。けれど、それが他人から借り受けたもの――ミズキの力だと気づくと、己を護る力としての頼もしさが背中を押してくれるような感覚へと移り変わっていくようだった。

 

 そして僅かな後、あるいはヤツハにとっては力を受け入れた相応の後。第一の流れを追うように、ヤツハの身体にはもう一つ、別の力が流れ込み始める。
 その力はどこか懐かしいようで、ようやくあるべき場所へ帰ってきたような安心感があった。ミズキの力に護られていることとは違う、己の内側にあることがもっともらしいと思えるような、そんな安心感だった。

 

 しかし、だ。その優しい感覚も刹那のうちに過ぎ去った。
 代わりに流れ込んできたのは、身震いするような恐ろしさを伴ってやってくる、暴虐的な力の奔流であった。

 

「うっ……ああっ……!」

 

 相手を前にしていることも一時忘れ、両腕で身体を抱くようにして耐えるヤツハ。内側から弾けてしまいそうな苦しみに喘ぎながら、ただ祈るようにして怒涛が収まるのを待ち続ける。
 やがて、どうにか耐え忍んで息を落ち着けた頃には、その力の奔流を体現する物が彼女の隣に現れていた。

 

──エピソード1-6:山城ではじめての〇〇(後篇)より──

  名目上はミズキとコダマの代理戦争ですが、ヤツハの力を見極めるための戦いでもあります。ミズキ側として戦うヤツハは、自身の力に加えミズキからも力を借りています。

  まだ力の扱い方に慣れていないようで、自身の象徴武器を出すのにも一苦労です。

「おおっ!? これはこれは……」

 

 真っ先に声を上げたのは、歪んだ笑みを浮かべたクルルだった。
 鏡。北限の地にて、コルヌを退けたあの鏡が、ただ静かに宙に浮かび、夕羅の姿を映し出していた。
 唯一ヤツハの様子に心を砕いていたのはハツミだけであり、この代理戦争の主人たる二柱は対照的な反応を見せていた。ミズキは目を細めるようにして冷静に観察し、理解に努める一方で、コダマはどこか呆然としながらも、口元は笑っていた。

 

 そして相対する夕羅は、彼女の宿すメガミと同じく表面上は呆れながらも、飄々とした態度を潜めて眼光鋭くヤツハを睨んでいた。

 

「やっぱりキミはあの鏡を使っていたんだね」

 

 売りに出されていた欠片と同じ文様が、現れた鏡の縁にはっきりと刻まれている。肝心な経緯を教えていない以上、夕羅の誤解も当然だったが、この段になって誤解を解く余裕はヤツハにはなかった。
 夕羅は顕現させた鋼の拳を打ち鳴らし、力を溜めるように重心を沈める。飾り気のない鉄の板で覆っただけの手袋だからこそ、コダマの顕現武器には純粋に威力を求める意思の発露を感じさせてやまなかった。

 

──エピソード1-6:山城ではじめての〇〇(後篇)より──

  ヤツハと夕羅は、実は今回の決闘より前に一度会ったことがあります。鞍橋の市場で、ヤツハは自分が扱う鏡に似た力を持つ破片を見つけたのですが、「それは危険な代物」「異質で、気味の悪い力」と夕羅に止められてしまいます。夕羅はまだヤツハのことを「鏡の欠片を使って謎の力を手に入れたミコト」と思っている様子で、ヤツハは夕羅を「自分の存在を否定する者」として捉えています。ヤツハを心配するハツミてぇてぇよ……

  夕羅は主にライラを信奉している稲鳴の部族の出身であり、ライラ/コダマを宿しています。

 そして、

 

「でもその力、ボクが打ち破らせてもらうよッ!」

 

 言い終わると共に弾かれたように踏み出し、先手の動きを作る夕羅。身体を軸を僅かに左右にずらしながら、猛然と前へと駆け出した。

 

「あっ……! え、ええと……」

 

 対するヤツハはそれにまず動揺を示してしまう。決闘の流れこそ教えてもらいこそしたが、誰も力の詳細を分かっていないのに戦い方を授けられるわけもなく、夕羅の機敏な動きに初陣のヤツハはただただ慌てることしかできなかった。

 

──エピソード1-6:山城ではじめての〇〇(後篇)より──

  ボクっ子かわいい

  夕羅が宿すライラ/コダマはほとんど間合2以下でしか攻撃できないため、先んじて間合を詰めていきます。鏡の欠片のことを知っているため、ヤツハの攻撃間合もある程度把握していると思われます。

  一方ヤツハは当然ながらなにも分からないため、その場で慌てることしかできません。

 それを見て取ったか、

 

「ほら、来ないのかい!?」

 

 半分ほどの間合いをもう詰めようかというところで、盾のように手の甲を向けて構えられた両腕の合間から、嘲笑う夕羅の表情が覗く。

 

 混乱ここに極まったヤツハは、半ば考えることを放棄しながら、己に満ちる力に意識を注いでいた。
 想起するのは、北限の番人に膝をつかせた恐ろしい星空の怪物たち。
 鏡から溢れてきたあの巨腕や牙こそ、ヤツハの知る唯一と言っていい攻撃の形だった。夕羅のように己の身体でどうにかするなんて考えもしなかった。だからただひたすら、自身の力があの形となって鏡から現れることを願いながら、少しでも時間を稼ぐように後退ることしかできなかった。

 

 しかしてそのがむしゃらな祈りは、現実となって現れる。
 今まで夕羅だけを映していたはずの鏡の奥から、蠢く星空が鏡面を食い破るようにして世界に溢れ出した。

 

「おっ」

 

 夕羅の前に織り成したのは、人一人を飲み込んでしまえるほどに大きな獣の顎である。夕日に炙られたように赤みがかった夜空の色は、凄惨な威力を物語っているようだ。

 

──エピソード1-6:山城ではじめての〇〇(後篇)より──

  まだ自分の間合に入っていないがここで夕羅は一度足を止め、ヤツハを挑発します。ヤツハは北限で一度だけ使った鏡の力を思い返し、それを形にします。

この頃の昏い咢はまだ不可避しか付いてない

 だが、放たれた猛獣を前に、夕羅は小揺るぎもしなかった。

 

「はッ!」

 

 襲いかかった大顎の横っ面を、その硬い拳の甲で鋭くはたき落とす。ひび割れた地面に打ち据えられるというところで、呻き声一つ上げることなく獣は宙に溶けていく。

 

──エピソード1-6:山城ではじめての〇〇(後篇)より──

  撃ち落としを使用して、昏い咢を打ち消します。対応不可(通常札)はまだ付いてなかったので、あえなく攻撃は消えます。夕羅が一度足を止めたのは、あえて昏い咢の間合に留まって打ち消しを狙っていました。初心者に初見殺しを仕掛ける夕羅ちゃんかわいいね。

つよい、かっこいい、だいすき
(新幕のカードとの微妙な違い、わかるかしら?)

 そのまま夕羅はさらに加速を作ると、手を伸ばせば触れ合える最至近の距離へと踏み込んだ。同時、纏っていた鋼の拳を還し、こちらは本物の獣を思わせる装飾の施された三叉の爪をその手に顕現させる。

 

 間断なく繰り出される動きを前に舌を巻くヤツハ。鍛えられたミコトの技を初めて目にするのがこんな間近になろうとは夢にも思わなかっただろう。
 動きより遅れて理解を得る彼女に、反応など許されるわけもなかった。ましてや星空の獣と解き放つために己を駆け巡った力の衝動に意識を割かれては、瞬き一つの間に迫りくる刃を正確に追うことすら難しい。

 

「エヤァァァッ!」

 

 飛びかかるように突き出される、あまりに前のめりな一撃。多少の反撃を受け入れてでも繰り出そうとする連撃を予感させる動きだったが、それに鏡の獣が応じることはなかった。

 

「っ……!」

 

 代わりに犠牲となったのは、ヤツハが念じるように差し出した桜花結晶だ。軌道を逸らされた夕羅の切っ先が、ヤツハの帯を掠めていく。しかし返す刀で振り上げられた爪に充てがうには間に合わない。
 だが、第二撃がヤツハの顔を切り裂くことはなかった。咄嗟に働いた防衛本能が、鈍い桜色に輝く不可思議な防壁となって刃を阻んでいたのである。
 気づけば、ヤツハの頭上を宙に浮かぶ巨大な兜が覆っていた。人が被るには一回りも二回りも大きく、左右に伸びた角は勇猛さを示すよう。これこそ護りの象徴たるミズキの力を宿す証左であり、ヤツハへの堅固を約束するように悠然と聳えていた。

 

──エピソード1-6:山城ではじめての〇〇(後篇)より──

  懐へ飛び込んできた夕羅の二連撃を、一発目はオーラ、二発目は対応防壁で受け止めます。しかし物語セットによると、夕羅のデッキに流転爪は入っていません。片方は獣爪としてもう片方はなんでしょう?雷螺風神爪ですかね?風雷撃は多分撃ち落とししか使用しておらずゲージが一つしかなく0/2になるため考えにくいと思います。というか夕羅ちゃんのデッキ序盤のゲージ死ぬほどキツそう。

  ヤツハがずっと動いていなかった事を考えると、夕羅は宿し前進にかなりリソースを注ぎ込んだはずですので獣爪までで一旦リソース切れなのでしょう。

再起もする頼もしい切札

なんか全力でも切札でも全部打ち消せるってすごいこと書いてる。カムヰさん!?

 城壁を象る防壁を前に、夕羅は勢いを殺されていた。彷徨う視線は次の手を探すようで、防壁を食い破ることを諦めても前への意思は途絶えていないようだ。
 故にヤツハは企図を挫くべく、己の頭を振るえば、それに追従する兜の逞しい角が眼前の空間を薙いだ。

 

「っと……!」

 

 夕羅はそれに桜花結晶を充てがうことで逸らし、再び爪を突き出すだけの勢いを残そうと試みたものの、体勢は果敢な連撃を繰り出すには心もとないものとなる。

 

──エピソード1-6:山城ではじめての〇〇(後篇)より──

  前のターンに対応を行っていたため、このターンで反攻を使用します。ミズキを宿す時の基本を抑えてますね。物語セットの対応後反攻のバフの値は+1/+1なので、2/2になった攻撃を夕羅はオーラで受け止めます。ちなみに物語セットでは陣頭は採用されていません。

これって角を振り回していたんだね

 距離を望むヤツハには、今度は鏡が応える。標的を見据えるように夕羅へ向けられていた鏡面がヤツハも捉えるように向き直り、僅かな後に彼女の像をその後方へと映し出した。不思議なことに、視点は刹那の後にその像の位置からのものに変わっていた。

 

 仮初の離脱を確かなものとするべく、さらに夕羅を追い払おうと鏡から生み出したのは怪物の爪だ。消える防壁に代わって、暴虐的な斬撃が夕羅に襲いかかる。

 

「くっ、あぁっ……!」

 

 人の背丈を超える大きさの爪はもはや斬撃というより打撃のほうが近かった。足捌きによって避けられないと受け流す構えをとった夕羅を嘲笑うかのように、盾とした彼女の爪と結晶ごと薙ぎ払う。その威力に怯んだかのように、ヤツハの纏っていた結晶が彼女から離れていく。
 その様にさらなる追撃を訴えるのは、ヤツハを巡る鏡の力だった。鏡の向こう側にいる何者かが、彼女の意思に関係なく鏡面を跨いで溢れ出てくるような、暴走じみた衝動が内側から胸を叩き続けていた。

 

「だ、だめ……」

 

 破滅的な末路すら想像してしまうそれを、ヤツハは必死に乗りこなそうと力の流れを意識する。蓋をしてしまっては意味がなく、制御することこそ重要なのだと肝に銘じて、暴れる力に己の意思を訴え続けた。
 鏡による像が元に戻り、視界が大きく一歩分前にずれる。目の前では、舌打ちと共に暴虐の余韻から解き放たれた夕羅が立ち直ったところだった。

 

──エピソード1-6:山城ではじめての〇〇(後篇)より──

  幻影歩法で一歩後ろへ下がり、星の爪で攻撃します。反攻でオーラを削られた夕羅はこれをライフに食らいます。そしてここでもやはり星の爪の【攻撃後】効果はちゃんと描写されています。

使用者を鏡像の位置に移すらしい?それとも意識だけ?

ここでもライフを取るのに役立った、頼もしい一枚

  幻影歩法の効果は切れて、夕羅のターンに移ります。

「……少しはやるね」

 

 彼女に戦意の衰えはない。それどころか、相手を食らわんとする意欲を益々漲らせているようだった。
 そして夕羅は、その意を示すように、

 

「でも」

 

 地面を強烈に踏みしめ、凄まじい威圧感を放つ。意思という力がびりびりと空間を伝わってくるような、不思議な力場が突如として周囲を覆った。その中で彼女は、意思の源としてヤツハへと毅然とした一歩を踏み出している。
 危険を察知したヤツハは反射的に退避を選択しようとする。しかし、彼女の足はどれだけ力を込めても、地面に縫い付けられたままだった。

 

──エピソード1-6:山城ではじめての〇〇(後篇)より──

  物語セット専用カード、敷道弐式です。相手の前進、離脱、後退を全て封じ、間合2に歩み寄ります。ヤツハが間合2で使用できる攻撃はすでに使用した反攻ともう一枚しかないのですが、この後の展開を見るにもう一枚は手札になかったのでしょう。そしてパニック状態のヤツハちゃんは纏うことも忘れちゃいます、かわいいね。

  行動できないヤツハのターンはそのまま終わり、間合2且つ不動の状態で夕羅がターンを迎え、猛攻を仕掛けます。

次のターンタコ殴りにしてやるっていう怖いカード

「……!」

 

 分かったときには時既に遅し。接近への拒絶を許さない力場の中、ヤツハの眼前にて大地を抉るほどに踏みしめられた夕羅の姿勢は、不動を貫くことで力を高めているような、破壊的な一撃の到来を告げていた。
 そして腰だめに構えられた右の拳には、岩をも穿つ鋼の顕現が。

 

「ヤァッ!」
「ご、ぅ……!」

 

 目で追うこともままならない鋭い正拳が、ヤツハの腹部を強かに捉えた。護りの結晶を満足に充てがうこともできず、身体の中で何かが身代わりとなって砕ける感覚がありありと分かる。それでもなお減じきれない凄まじい衝撃が、彼女の足元を不確かにさせた。
 さらに夕羅は好機と見たのか、手中に爪を顕現させると、回避もままならないヤツハに向かって振り下ろす。ばち、ばち、と雷を纏ったその一撃は拳に劣らず機敏かつ鋭利で、意識をも揺さぶられていたヤツハに綺麗に吸い込まれていく。

 

「い、っ――ああっ……!」

 

 重ねられた連撃に、堪らず膝をつく。兜の重みはないはずなのに、自然と頭を垂れるような姿勢が生まれる。それに先程の防壁を思い出したのか、夕羅はそれ以上の攻めの手を僅かに躊躇したが、ヤツハから窺い知ることはできない。

 

──エピソード1-6:山城ではじめての〇〇(後篇)より──

  一撃目の拳を瞬腕とするか鉄拳とするかは悩ましいところです。瞬腕の方が見栄えもいいですしオーラ受けできなかったことも説明しやすいですが、この後連続して夕羅が攻撃を繰り出しているため全力でない鉄拳の方が理屈は合っています。不動のテキストを持つ鉄拳の方が不動で力を高める描写にも合致しますので、ここは鉄拳を選びます。

  鉄拳をライフに通した後すかさず爪で追撃する夕羅。雷を纏っているため風雷撃と考えても通りそうですが、風雷撃はこのすぐ後でよりふさわしそうな描写があるため、一旦雷螺風神爪もしくは獣爪としておきます。いつ再起させた?

新幕では闘神という名前で頑張ってます

 結晶があったところで、身を裂く一撃は苦痛を伴う。元ミコトとしてミズキから教えられていたものの、聞くのと実際に感じるのとでは訳が違う。見届人たちの存在も含め、命の危険はないと励ますように送り出されていても、ヤツハにそれを感じるなというのは土台無理な話だった。
 その恐怖は、一抹のものであっても芯に据えたはずの意思を蝕んでいく。

 

「い、嫌っ……!」
「……!?」

 

 鏡を御していたヤツハ自身の意思の力が緩み、鏡が輝きを放つ。その結果にもまた恐れを抱きながら、己を害する者への恐怖心は力を解き放つことを選ばせた。

 鏡から現れたのは、鉤爪のついた無数の細腕。
 一つ一つは大きな顎や爪ほどではない。けれど、それこそ星の数ほどもあろうかという大群は、蹲るヤツハの周囲に嵐のような暴力の場を容易く生み出した。

 

「ちょっ――」

 

 夕羅が腕を一つ打ち落とそうとも、何事もなかったかのように次の腕が迫りくる。二本しかない腕では対処できる数には限界があり、結晶を盾としても完全に防ぎ切ることは叶わない。
 その一方で、この嵐には安全地帯など存在しなかった。敵に向かうことだけを目的とした腕たちは、暴れまわるあまりにヤツハすらも傷つけていた。それでも夕羅の至近への恐怖は勝っており、じっと嵐が過ぎ去るのを耐え忍ぶ。

 

「う、うぅっ!」
「でたらめな力だ……!」

 

 毒づく夕羅は抵抗虚しく、鉤爪の渦に飲み込まれていく。彼女のまた防御の姿勢をとって耐えきることを選んだようだった。

 

──エピソード1-6:山城ではじめての〇〇(後篇)より──

  連撃を受ける前に引けなかった鏡の悪魔を解放するヤツハ。お互いに大ダメージを与えます。

自分自身すら傷つける暴虐的な力

 しかし、無数の腕の中に消える夕羅の最後の表情が至って冷静なものであることに、ヤツハは息を呑んだ。にやりと歪められた口元に悪寒を覚え、自身をも苛む嵐の中で歯を食いしばりながら立ち上がった。

 

 しばらくするうちに、殺到した腕は力を失って日差しの中にゆっくりと消えていった。
 そうして現れる、夕羅の姿。

 

「でも、それは悪手だよ」

 

 膝をつくことなく、勝利を確信する声と共に、反撃の意思を示すべく爪を掲げていた。
 消えた星空の代わりに纏うは、漂う桜色の霞を巻き上げる風と、怒りを体現するかのように嘶く雷。
 暴虐的な嵐を乗り越えた先には、新たな嵐が待っていた。

 

「あ……」

 

 今度は自分がその嵐に呑み込まれるのだと、ヤツハは悟ってしまった。恐れに突き動かされて遮二無二力を放ったところで、倒せなければその次が粛々とやってくるだけだった。
 我こそが食らう者だ、と主張するように、夕羅の爪が獣の大口のように構えられる。周囲で鳴り荒ぶ嵐が指向性を持ち、ヤツハという獲物へ狙いを定めた。

 

「はあぁぁぁぁッ!」

 

 大地をかき乱す風雷が、強烈な一撃となってヤツハに襲いかかる。彼我の間合いを切り裂くような鮮烈さが、彼女の脳裏に敗北の二文字を過ぎらせる。

 

──エピソード1-6:山城ではじめての〇〇(後篇)より──

  ライラオリジンを象徴する通常札、風雷撃です。いつゲージを溜めたのか定かではないがかなりの威力を持ってヤツハへ襲いかかります。

  なぜこの描写を雷螺風神爪でなく風雷撃としたのかは、この後の展開にあります。

これをな、流転爪でな、一巡に二回振るんじゃ(流転爪未採用)

「――――」

 

 大自然の猛威を前に、動くことも、声を上げることすらできない。
 そんなヤツハの脳裏にはふと、旅立ちを決意した山の景色が思い起こされた。それからはまるで走馬灯のように、北限からこの山城に至るまでの旅の様子が次々と浮かんでは消えていった。
 決別したコルヌと、手を取ってくれたクルル。有り様の手本となるハツミに、人からの視点をもたらして天詞たち。近くは鞍橋で起きた夕羅との諍いがあり、そして今、山城で刃を交える自分がある。

 

 視界の端でさざめく神座桜と、根本にいるはずのクルルたち。
 そして眼前では、己と鏡をどこか蔑視する相手が、ヤツハの向こう側にある勝利へと手を伸ばさんとしていた。

 

「…………」

 

 言葉は出ない。けれど、彼女の胸に飛来する想いはあった。

 まだ、分からないことだらけ。誰かに導かれてばかりいる。
 それでも自分は今、己の足でここに立っている。
 だから、

 

『あぁ、ここは、勝っておきたい』

 

 と。

 

 自分でも驚くような、そんな柄にもない感情だった。もしかしたらそれは、反感を礎とした仄暗い出処の想いかもしれない。
けれどヤツハは、じわじわと染み渡るその感情を受け入れた。終わりをもたらす一撃という光景があっても、自身でらしくないと思っても、もう一度、手をぎゅっと握りしめて立ち向かう意思を奮い立たせる己を、止めることなんてできなかった。

 

──エピソード1-6:山城ではじめての〇〇(後篇)より──

  勝利への渇望の芽生えです。己の存在を否定する相手に対し「私はここに居る、ここに居たい」という意志の現れが感じ取れます。

これは決闘とは関係ない決意

 そしてヤツハは、背後に控えた鏡へと、決意を込めた。
 すると、

 

「何を――」

 

 眩い輝きを放ち始めた鏡が、ヤツハの盾となるように差し出される。
 大嵐の前では、一抱えほどもある鏡であろうとも容易く吹き飛ばされてしまう……はずだった。
 しかしヤツハの鏡は、風雷を受け止め――そして、弾き返した。

 

「な……!」

 

 まさしく鏡写しにするように、鏡面に触れた途端に反転する嵐は、それを成した夕羅の元へと向かう。
 跳ね返したそれは、確かに荒ぶる風であり、地を裂く雷だ。
 けれどその実態は、あの怪物のような星空――静謐な夜の海など知らない鏡の向こうの何かが、夕羅の放った大嵐を象って現れたのである。

 

「ぁ、がぁっ……!」

 

 元の嵐はかき消され、予想外の反撃に夕羅は防御もままならずに弾き飛ばされる。それでも彼女は、身の内に残された結晶を頼りに膝をつくことはなかった。

 

──エピソード1-6:山城ではじめての〇〇(後篇)より──

  対応双葉鏡の祟り神で風雷撃を打ち消し、攻撃を反射します。直前に鉄拳と爪の連撃、そして鏡の悪魔でライフが削れているため反射に成功したのでしょう。打ち消しをしているため、切札の雷螺風神爪ではなく風雷撃で間違いないと思います。

  一般のミコトには扱えない力だったのか、鏡の欠片と対面したことがありそうな夕羅にとっても祟り神は予想外な反撃だったようで、ライフにダメージがモロに入り、情勢はまた変化します。

持ち主のピンチを助けてくれるカード

「あぁッ、ちくしょう……、でも……まだだッ!」

 

 決定的な一撃を打ち破られた苛立ちが、悪態となって表れる。その右手には雷を帯びた爪を、左手には鋼の拳をそれぞれ顕現させ、黒き暴風の止んだ彼我の間合いを猛進する。この段になって武器を同時に顕現させる技量は称賛されて然るべきものだ。
 けれどそれも、正しく使われれば、の話。
 決着までのあと一歩こそ、冷静さをもって踏破しなければならない。糧とするべきは執念であり、自尊心のような不純物は致命に足る枷となる。

 

「……焦りすぎだ、未熟者」

 

 ぽつりと、眇めるコダマが零した声も、夕羅には届かない。
 そして対するミズキは、頬に薄く微笑みを乗せて、隠した口元から言葉を漏らす。

 

「今ですわ……!」

 

 走り込む夕羅は獣性すら思わせる低い姿勢でヤツハへと食らいつく。もはや火を見るより明らかとなった互いの敏捷さは、肉薄した後こそが駆け引きの場なのだと告げている。
 事実、瞬く間に距離を詰めた夕羅の爪は、電光石火の勢いでヤツハの腕をえぐった。

 

「っ、ぅ……!」
「おォッ……!」

 

 まろび出る結晶。雄叫びを上げてさらに一歩、表情の機微すら見て取れるほどの至近に至り、力を蓄えていた拳を次弾として繰り出す。
 しかし、打撃されたのはヤツハの肉体でも結晶でもなく、堅牢な護り。

 

「ぐッ……!?」

 

 城壁を模した光の壁が、続く拳を受け止めていた。
 見れば、ヤツハを覆う兜が淡く輝いている。まるでそれは、庇護する主に対して、今こそが好機だと告げているようであった。

 

──エピソード1-6:山城ではじめての〇〇(後篇)より──

  リーサルを逃しましたが、ヤツハのライフが風前の灯であることに違いはありません。一度挫いてもまだ勝機はあると判断する夕羅はそのまま押し切ろうとします。爪の攻撃をライフに通し、続いて(おそらく)鉄拳も打ち込みます。

  しかし、ヤツハを守る力は自分の物だけではありません。彼女は今、守護を象徴するメガミの力も身につけているのです。

切って返すは今ですの!

その意を、無駄にすることはない。
 勝ちたい、と願ってしまったからには。

 

「来てッ!」

 

 兜の声に従い、か細く吠えるヤツハ。それに応えるように、鏡の向こうから星空が怒涛の勢いで溢れ出す。
 振るわれる巨大な爪は、防護壁に勢いを全て殺されてしまった夕羅を容赦なく斬りつける。護りを固めるしかなくとも、集めた桜花結晶を根こそぎ刈り取られてしまえば、後のない無防備な状態を晒すしかない。

 

「う、ぐぅぅぅ……!」

 

 そして鏡の怪物は、大口を開けてその最期を待っていた。
 見上げるほどに大きな、怪物の咢。
 その、落ちてくる厄災のような星空に、夕羅が抗うことはできなかった。

 

「あぁぁぁぁぁ――」

 

 がぶり、と。
 恐怖ではなく、憤りの叫びと共に、彼女は呑み込まれていった。
 大顎の獰猛な歯の隙間から、砕けた結晶が風に乗って散っていく。
 夕羅に残されていた、最後の結晶が。

 

──エピソード1-6:山城ではじめての〇〇(後篇)より──

  天主八龍閣によって強化された3/3の星の爪でオーラを破壊し、最低でも3/2以上の昏い咢によってリーサル、ヤツハの勝利です。ちなみにヤツハのデッキに星の海もありましたがさすがにフレアが足りないと思います。

今回は出番がなかった

  以上で、ヤツハvs夕羅の決闘は終わりです。

  鞍橋での出会いで鏡の力を「危険で異質」という理由で使わないように諌めていた夕羅ですが、それだけでなく、鏡の欠片を使って謎の力を手に入れるミコトたちを、夕羅はどこかで「鍛錬を怠り危険な力に頼って楽に強くなろうとしてる輩」として見下していたのでしょう。故郷を離れ修行の旅に出た夕羅にとっては許せない行いに見えていたとも思います。

  しかしヤツハにとってこの力は己の根源であり、向き合うべき物です。この戦いを経て、ヤツハが力に向き合う真剣さを知った夕羅は、今度は純粋にその力の危険性から、ヤツハを心配し忠告を言い渡し、決闘を通じて鏡の力の強大さと危うさを身をもって知ったヤツハも、それを素直に受け取りました。ヤツハにとってこの戦いは、初めて決闘の形で「自分を否定する者」と真っ向からぶつかった一戦であり、自分のことも世界のことも何一つ知らない中でそれらへの向き合い方や己の存在意義はここからの物語でも大事なテーマになります。正面から否定してくるものに自分を認めさせたって考えるとこれって最終盤の神座桜に認められる展開と対応してるんじゃ?はぁエッモ

 

 

  神語りの決闘録では不定期にこのように公式小説に登場した決闘シーンについて勝手に考察/解説していく予定です。これを見て「面白そう」と思った方は、ぜひ公式小説を読んでみてください。それではまた次回。

 

画像素材:

https://main-bakafire.ssl-lolipop.jp/furuyoni/na/rule.html

(ふるよにコモンズ/BakaFire,TOKIAME)

 

ところで夕羅ちゃんの外見設定ってどんな感じなんですかね?個人的には褐色八重歯赤髪ポニテ身長140cmぐらいだと嬉しいんですけどそれが千洲波との戦いでライラA様と同じ服装を着て身体中に紋様を付けるんですか?えっち過ぎません?ねぇBakaFireさんそこんとこどうなんですかねぇねぇねぇねぇ

神語りの決闘録ーヤツハvs青雲

  皆さん、はじめましての方ははじめまして、そうでない方はいつもお世話になっております、幼女です

  公式小説、読んでますか?普段宿しているメガミたちや、新しい拡張に登場する予定のメガミやそのカード、そして我々と同じミコトとして桜降る代に生きる人々の物語など、ふるよにの世界観をふくらませてより魅力的にしてくれます。

  しかしこの公式小説、中々分量が多くて読むのは大変ですよね。皆さんの中にもきっと「興味はあるけど、読む時間/気力がないなぁ」という方もいるはずです。

  そこでこの記事シリーズ(なお次回作の予定は不明)では、公式小説の中でも特に「決闘」を描写したシーンを抜き出して「ここの描写はこのカードのことなんじゃないか?」みたいなことを勝手に解説していきます。あくまで一読者の考察(という名の妄想)であるため必ずしも正しいわけではありませんが、ふるよにの物語に触れるきっかけになれれば嬉しいです。

ヤツハvs青雲(『八葉鏡の徒桜』エピソード6-2:瑞泉で自分を探して(中篇))

  あらすじ:北限にて目覚めたヤツハ、記憶を持たない彼女は、自分の力に興味津々なクルルと出会う。自分自身の正体を知るため、より詳しい調査をするための機械があるという瑞泉の地へ向かう。そこで彼女は、クルルの旧友(?)である宮司・青雲と知り合うのであった。

 

  公式小説二作目、八葉鏡の徒桜からの選出です。ある意味で師匠枠の人と主人公の出会いですね。今まで出会った相手と違ってこれからのヤツハの進むべき道についても助言してくれた人であり、前作である桜降る代の神語りのラスボスでもある青雲と、ヤツハの力を調査するために決闘を行います。さっそく決闘に移りましょう。

 

 黒く棚引く切っ先が、花弁を一片、刈り取った。
 切り裂かれた桜霞の奥に覗くのは、応手に歯噛みするヤツハの相貌だ。

 

「……っ!」

 

 さらなる連撃を恐れ、自然と体重が後ろへ逃げる。眼前で見送った刃は影で編まれた大鎌のそれであり、鋭く振るった姿勢を残すのは青雲だ。
 彼は身なりこそ普段の作務衣姿のままだったが、箒からいっそ禍々しい得物に持ち替えているのみならず、背中から歯車を骨格とした一対の翼を生やしている。その奇異で威圧的な姿で踏み込んできた彼は、斬撃の手応えに納得するよう息を吐き捨てていた。

 

──エピソード6-2:瑞泉で自分を探して(中篇)より──

  このシーンは決闘の中~終盤から始めています。ヤツハは自分の力を使うのに対し、青雲はウツロ/クルルを宿しています。

  開幕は刈取りから入ります。「一片」って書いてありますけど【攻撃後】効果は結晶を2つダストに送ります。

一枚で最大4つもダストを生み出してくれるすごいヤツ

 しかし、ヤツハはそこで背後に一歩を刻むをよしとしなかった。踏みとどまった足が、大地に降り積もった桜の塵を巻き上げる。

 

 彼女の頭上で揺蕩う鏡が、青雲の残身を映し出す。
 その像を犯すように、どろ、と鏡面の向こうから星空色の何かが溢れ出す。

 

「く、ぅあぁッ……!」

 

 反撃の好機に、相手を見据えたヤツハが気炎を上げる。疾く、そして確実に力を御そうとする意思は、己の内から湧き出る苦しみを抑え込むようにして限界した。
 鏡から飛び出した怪物の腕が、歪で巨大な爪を青雲に差し向ける。ヤツハの纏っていた桜花結晶すら巻き込んだその一撃は、場をまるごと薙ぎ払う暴力となって、踏み込んできた青雲を捉えんとする。

 

──エピソード6-2:瑞泉で自分を探して(中篇)より──

  返しにヤツハは星の爪を使います、【攻撃後】効果の描写もキチンとされていますね。

そのオーラって爪君に巻き添えにされたんだね

「ふん……」

 

 到底避けきれない一手を前に、彼の対応は冷静だ。後の展開を考えてか、後退を志向しながら周囲に浮かぶ結晶を盾とするようにあてがった。
 けれど、ヤツハはその防御の術を否定する。
 強い意思の宿った彼女の瞳が、青雲の守りを射抜いた。

 

「……む」

 

 巨大な爪を受け止めんとしていた三つの結晶のうちの一つが、まだ斬撃の届かぬうちに砕けて千千と輝いた。まだ桜の力こそ残っている状態だが、漫然と揺蕩うそれは防御の礎とするにはあまりに心細い。
 異常な動きを見せた結晶を前に青雲ができたのは、己が身を攻撃へと差し出すことだけだった。

 

──エピソード6-2:瑞泉で自分を探して(中篇)より──

  これに対し青雲はオーラで受け止めようとするが、ヤツハの意志によってオーラを剥がされ、ライフ受けを余儀なくされます。実質対応不可1/-を持つ相手にはオーラに余裕を持っておきましょう。

1/-、フレア焼き、オーラダメージ1点軽減、鏡映合わせと器用な子

「ぐぅ……!」
「まだっ!」

 

 直撃によろめく彼に、ヤツハは畳み掛けるよう力を練る。勢いのままに堰を切ってしまいそうな衝動を抑えながら、次なる怪物の姿へ意識を傾けていく。
 だが、その力が鏡面を食い破る手前で、彼女は怪物に待ったをかけた。見れば青雲は薄い緑色の光に覆われており、不敵な笑みを浮かべてすらいた。どんな強力な攻撃も受け止めてしまうその防壁の前では、怪物の暴虐すら無意味と化してしまう。

 

──エピソード6-2:瑞泉で自分を探して(中篇)より──

  すかさず追撃(恐らく昏い咢?)を仕掛けようとするヤツハですが、そこに待ったがかかります。いつの間にか仕込まれていたりふれくたによって各ターンの二回目の攻撃が打ち消されてしまうため、これ以上の攻撃は意味ないと判断したのでしょう。

  りふれくたの機巧条件である攻撃・対応は、刈取りがありますのでもう一枚はどれーんでびるあたりでしょうか?

全力でない攻撃札が三枚しかない相手にこれを採用する鬼畜

「なら――」

 

 追撃を諦め、位置取りを優位に。守りを塵に還すあの大鎌の間合いの内側に潜り込んでしまおうと、彼女の脚は前を目指した。自在かと思うほど距離を容易く超える刃であろうと、怪物の手の届く近距離に居続ければ満足に振るうことはできない。
先んじて間合いを離す動きを見せていた青雲に、ヤツハが追いすがる形となる。
 そんな彼女の脚を鈍らせたのは、地面に急速に広がった影だった。その源は、青雲が落とした自身の影だ。

 

「う……」

 

 その影に足を踏み入れた瞬間、虚脱感がヤツハを襲う。痛みも苦しみもなく、ただ力が闇に呑まれていく感覚が彼女を蝕んだ。周囲に漂っていたはずの桜の力が減じていき、鼓舞されていた心に不安の影すら射すようである。

 その僅かな隙に、青雲はヤツハの狙いをさらに否定する。絡繰の翼に加えて、彼の背中に新たに生じた影色の四枚翅が力強く羽ばたき、背後への確かな推進力を生み出した。

 

──エピソード6-2:瑞泉で自分を探して(中篇)より──

  攻撃は諦めて間合を縮めるヤツハ、ウツロの得意間合より内側に潜ってしゃがみます。

  それに対し謎の影の攻撃?を仕掛ける青雲。これに関して私は恐らく魔食の効果だと思っています。重圧説もあるらしいですが、この後で青雲が連続して通常札を4枚使用しており、その間ヤツハの(対応以外の)行動描写がないため、こちらの影攻撃は切札から発生したものと解釈しています。(副次的な理由として「圧」という感じの描写でないことと、「蝕む」という言葉が使われていることがあります)

隣がクルルだから、オーラ受け安定な気もするけど…?

  開始フェイズの魔食に続いて、まずは影の翅で後ろへ下がったようだが...?

「残念」

 

 ヤツハから遠ざかっていく青雲。宙空に留まりながら影を引き連れた彼の短い呟きは、猛烈な唸りを上げ始めた絡繰の翼に掻き消される。
 もはや目で回転を追うことすらままならない歯車たちを前に、青雲の纏っていた結晶が自ずと塵へと砕ける。それが翼へと吸い込まれていったかと思いきや、大鎌と同質の影となって瞬く間に吐き出されてきた。

 

 重く鈍重さすら感じる濃い陰を、駆動する機関が推進させながら生み出していく。地面に広がる影へ飛び込んだ様は、獲物を求める猛禽のようだ。
 直後、ヤツハの足元から、栓を抜いたように影が噴き出した。
 

「きゃあっ!?」

 

 視界が黒く染まり、彼女の長髪と袖が暴れる。身を引き裂かれるということはなかったが、守りとしていた結晶たちが次々とひび割れ、力を失ったように塵と化していった。

 

──エピソード6-2:瑞泉で自分を探して(中篇)より──

  なにやら絡繰ですごいことをしているみたいですが、注目すべきは赤字の部分、自分のオーラを砕いている描写です。「いいでしょう!」で有名な例のシーンと同じく何かしらの付与札をオーラから納めたと考えていいでしょう。ヤツハのオーラが塵と化す描写からおそらく遺灰呪をあくせらーから使用しています。この後ダストを利用してリーサルを取るためオーラから納めたのは理にかなった判断と言えます。魔食・影の翅・りふれくたであくせらーの機巧もバッチリです。

使う全力カードによって起きる現象が違うから描写が難しそう

 そして、無防備となったヤツハに向けられる、次なる一撃。

 

「はぁッ!」

 

 影の隙間から見える青雲が、右の手を突き出した。それに呼応するように、彼に従う影が漆黒の波動として放たれ、痛打の意思を伝えるべくヤツハめがけて飛来する。
 終局を間近とした彼女にとって、それは致命の一撃に等しい。たった一つでも結晶が耐えてくれさえいれば防げただろうに、周囲に舞う破片は形を失っていくばかり。今までじわじわと蝕まれてきた守りへの余裕は、ここに至ってついに決壊を迎えたのだった。

 

──エピソード6-2:瑞泉で自分を探して(中篇)より──

  遺灰呪でオーラを全て失ったヤツハへ無慈悲な黒き波動。「致命の一撃」とありますので、ヤツハのライフはもう2しか残っていないのでしょう。仕込みが難しそうなあくせらー遺灰呪からの攻撃直撃を実現する青雲の腕も見どころです。

意志が手札に残っていれば防げたのだが...

 しかし、意思を灯すヤツハの瞳は濁ることはない。
 結晶による守りでも、体捌きによる回避でもなく、彼女が選んだのは己の力。

 

「だめぇッ!!」

 

 悲痛な叫びが、拒絶を訴えた。
 瞬間、ヤツハの盾となったのは、彼女が操る鏡だ。主の意思に導かれるように波動の射線上に立ちはだかったそれは、敵意を受け入れるかのようにあるはずのない星空を映し出した。
 そして宙を渡りきった影は鏡を砕くことすらなく、鏡面に触れた途端、勢いはそのままに向かう先だけを反転させる。矛先は無論、影を放った青雲本人――星々のような輝きに侵食された形ある影が、諦めないヤツハの想いを乗せて舞台を駆ける。

 

──エピソード6-2:瑞泉で自分を探して(中篇)より──

  そのまま食らうわけにはいかないため対応切札の双葉鏡の祟り神を使用するヤツハ。黒き波動は打ち消され、反射されて青雲を襲います。

反射した攻撃は星の輝きに染まるらしい

 だが、強いられた行動が状況を改善させることはない。ヤツハは危険な攻めをしのぎこそしたが、放った反撃は青雲に容易く防がれてしまう。
 砕けて塵と化した結晶を、青雲は掴み取る。
 それこそが、求めていたものであると。

 

「灰よ、塵よ――」
「……!」

 

 離れた位置で彼が降り立った地表面には、これまでの激戦によって、そしてたった今、ヤツハが力の礎にして散っていった数多の桜花結晶の残滓が、鈍い煌めきを放つ雲海のように溜まっていた。
 それらは、青雲の呼びかけに答えるようにざわつき始める。
 あちらこちらから滲み出た影が、紙に墨を振りまいたかのように、戦場に暗く染み渡っていく。侵蝕の果てに待つ終わりを、ここに迎えるための舞台が整えられていく。
 そして青雲は、拳に力を込めてこう告げた。

 

「――集いて、呑み込めッ!」

 

──エピソード6-2:瑞泉で自分を探して(中篇)より──

  黒き波動だけは凌いだのですが、それも青雲の狙い通りでした。祟り神を使用した結果ヤツハのフレアはダストに送られ、灰滅の足しにされてしまいます。ヤツハのライフは残り2しかないため、リーサルになります。

決めることができればかっこいい切札No.1(当社比)

  以上で、ヤツハvs青雲の決闘は終わりです。弱い者いじめに見えなくもないがリーサルの動きが鮮やかな戦いでした。灰滅リーサルを狙う時の一つの動きとして「対応切札を切らせて相手のフレアをダストにする」というのがあるそうですが、そのためにはしっかり優勢を取って対応を切らざるを得ない盤面にする必要があり、それをウツロ/クルルの組み合わせで達成した青雲の腕に感服です。どうすれば実現できるのか私には皆目見当もつかない

 

  神語りの決闘録では不定期にこのように公式小説に登場した決闘シーンについて勝手に考察/解説していく予定です。これを見て「面白そう」と思った方は、ぜひ公式小説を読んでみてください。それではまた次回。

 

画像素材:

https://main-bakafire.ssl-lolipop.jp/furuyoni/na/rule.html

(ふるよにコモンズ/BakaFire,TOKIAME)