桜降る代の雑語り

ボードゲーム「桜降る代に決闘を」についての雑文を投げます

神語りの決闘録ーヤツハvs青雲

  皆さん、はじめましての方ははじめまして、そうでない方はいつもお世話になっております、幼女です

  公式小説、読んでますか?普段宿しているメガミたちや、新しい拡張に登場する予定のメガミやそのカード、そして我々と同じミコトとして桜降る代に生きる人々の物語など、ふるよにの世界観をふくらませてより魅力的にしてくれます。

  しかしこの公式小説、中々分量が多くて読むのは大変ですよね。皆さんの中にもきっと「興味はあるけど、読む時間/気力がないなぁ」という方もいるはずです。

  そこでこの記事シリーズ(なお次回作の予定は不明)では、公式小説の中でも特に「決闘」を描写したシーンを抜き出して「ここの描写はこのカードのことなんじゃないか?」みたいなことを勝手に解説していきます。あくまで一読者の考察(という名の妄想)であるため必ずしも正しいわけではありませんが、ふるよにの物語に触れるきっかけになれれば嬉しいです。

ヤツハvs青雲(『八葉鏡の徒桜』エピソード6-2:瑞泉で自分を探して(中篇))

  あらすじ:北限にて目覚めたヤツハ、記憶を持たない彼女は、自分の力に興味津々なクルルと出会う。自分自身の正体を知るため、より詳しい調査をするための機械があるという瑞泉の地へ向かう。そこで彼女は、クルルの旧友(?)である宮司・青雲と知り合うのであった。

 

  公式小説二作目、八葉鏡の徒桜からの選出です。ある意味で師匠枠の人と主人公の出会いですね。今まで出会った相手と違ってこれからのヤツハの進むべき道についても助言してくれた人であり、前作である桜降る代の神語りのラスボスでもある青雲と、ヤツハの力を調査するために決闘を行います。さっそく決闘に移りましょう。

 

 黒く棚引く切っ先が、花弁を一片、刈り取った。
 切り裂かれた桜霞の奥に覗くのは、応手に歯噛みするヤツハの相貌だ。

 

「……っ!」

 

 さらなる連撃を恐れ、自然と体重が後ろへ逃げる。眼前で見送った刃は影で編まれた大鎌のそれであり、鋭く振るった姿勢を残すのは青雲だ。
 彼は身なりこそ普段の作務衣姿のままだったが、箒からいっそ禍々しい得物に持ち替えているのみならず、背中から歯車を骨格とした一対の翼を生やしている。その奇異で威圧的な姿で踏み込んできた彼は、斬撃の手応えに納得するよう息を吐き捨てていた。

 

──エピソード6-2:瑞泉で自分を探して(中篇)より──

  このシーンは決闘の中~終盤から始めています。ヤツハは自分の力を使うのに対し、青雲はウツロ/クルルを宿しています。

  開幕は刈取りから入ります。「一片」って書いてありますけど【攻撃後】効果は結晶を2つダストに送ります。

一枚で最大4つもダストを生み出してくれるすごいヤツ

 しかし、ヤツハはそこで背後に一歩を刻むをよしとしなかった。踏みとどまった足が、大地に降り積もった桜の塵を巻き上げる。

 

 彼女の頭上で揺蕩う鏡が、青雲の残身を映し出す。
 その像を犯すように、どろ、と鏡面の向こうから星空色の何かが溢れ出す。

 

「く、ぅあぁッ……!」

 

 反撃の好機に、相手を見据えたヤツハが気炎を上げる。疾く、そして確実に力を御そうとする意思は、己の内から湧き出る苦しみを抑え込むようにして限界した。
 鏡から飛び出した怪物の腕が、歪で巨大な爪を青雲に差し向ける。ヤツハの纏っていた桜花結晶すら巻き込んだその一撃は、場をまるごと薙ぎ払う暴力となって、踏み込んできた青雲を捉えんとする。

 

──エピソード6-2:瑞泉で自分を探して(中篇)より──

  返しにヤツハは星の爪を使います、【攻撃後】効果の描写もキチンとされていますね。

そのオーラって爪君に巻き添えにされたんだね

「ふん……」

 

 到底避けきれない一手を前に、彼の対応は冷静だ。後の展開を考えてか、後退を志向しながら周囲に浮かぶ結晶を盾とするようにあてがった。
 けれど、ヤツハはその防御の術を否定する。
 強い意思の宿った彼女の瞳が、青雲の守りを射抜いた。

 

「……む」

 

 巨大な爪を受け止めんとしていた三つの結晶のうちの一つが、まだ斬撃の届かぬうちに砕けて千千と輝いた。まだ桜の力こそ残っている状態だが、漫然と揺蕩うそれは防御の礎とするにはあまりに心細い。
 異常な動きを見せた結晶を前に青雲ができたのは、己が身を攻撃へと差し出すことだけだった。

 

──エピソード6-2:瑞泉で自分を探して(中篇)より──

  これに対し青雲はオーラで受け止めようとするが、ヤツハの意志によってオーラを剥がされ、ライフ受けを余儀なくされます。実質対応不可1/-を持つ相手にはオーラに余裕を持っておきましょう。

1/-、フレア焼き、オーラダメージ1点軽減、鏡映合わせと器用な子

「ぐぅ……!」
「まだっ!」

 

 直撃によろめく彼に、ヤツハは畳み掛けるよう力を練る。勢いのままに堰を切ってしまいそうな衝動を抑えながら、次なる怪物の姿へ意識を傾けていく。
 だが、その力が鏡面を食い破る手前で、彼女は怪物に待ったをかけた。見れば青雲は薄い緑色の光に覆われており、不敵な笑みを浮かべてすらいた。どんな強力な攻撃も受け止めてしまうその防壁の前では、怪物の暴虐すら無意味と化してしまう。

 

──エピソード6-2:瑞泉で自分を探して(中篇)より──

  すかさず追撃(恐らく昏い咢?)を仕掛けようとするヤツハですが、そこに待ったがかかります。いつの間にか仕込まれていたりふれくたによって各ターンの二回目の攻撃が打ち消されてしまうため、これ以上の攻撃は意味ないと判断したのでしょう。

  りふれくたの機巧条件である攻撃・対応は、刈取りがありますのでもう一枚はどれーんでびるあたりでしょうか?

全力でない攻撃札が三枚しかない相手にこれを採用する鬼畜

「なら――」

 

 追撃を諦め、位置取りを優位に。守りを塵に還すあの大鎌の間合いの内側に潜り込んでしまおうと、彼女の脚は前を目指した。自在かと思うほど距離を容易く超える刃であろうと、怪物の手の届く近距離に居続ければ満足に振るうことはできない。
先んじて間合いを離す動きを見せていた青雲に、ヤツハが追いすがる形となる。
 そんな彼女の脚を鈍らせたのは、地面に急速に広がった影だった。その源は、青雲が落とした自身の影だ。

 

「う……」

 

 その影に足を踏み入れた瞬間、虚脱感がヤツハを襲う。痛みも苦しみもなく、ただ力が闇に呑まれていく感覚が彼女を蝕んだ。周囲に漂っていたはずの桜の力が減じていき、鼓舞されていた心に不安の影すら射すようである。

 その僅かな隙に、青雲はヤツハの狙いをさらに否定する。絡繰の翼に加えて、彼の背中に新たに生じた影色の四枚翅が力強く羽ばたき、背後への確かな推進力を生み出した。

 

──エピソード6-2:瑞泉で自分を探して(中篇)より──

  攻撃は諦めて間合を縮めるヤツハ、ウツロの得意間合より内側に潜ってしゃがみます。

  それに対し謎の影の攻撃?を仕掛ける青雲。これに関して私は恐らく魔食の効果だと思っています。重圧説もあるらしいですが、この後で青雲が連続して通常札を4枚使用しており、その間ヤツハの(対応以外の)行動描写がないため、こちらの影攻撃は切札から発生したものと解釈しています。(副次的な理由として「圧」という感じの描写でないことと、「蝕む」という言葉が使われていることがあります)

隣がクルルだから、オーラ受け安定な気もするけど…?

  開始フェイズの魔食に続いて、まずは影の翅で後ろへ下がったようだが...?

「残念」

 

 ヤツハから遠ざかっていく青雲。宙空に留まりながら影を引き連れた彼の短い呟きは、猛烈な唸りを上げ始めた絡繰の翼に掻き消される。
 もはや目で回転を追うことすらままならない歯車たちを前に、青雲の纏っていた結晶が自ずと塵へと砕ける。それが翼へと吸い込まれていったかと思いきや、大鎌と同質の影となって瞬く間に吐き出されてきた。

 

 重く鈍重さすら感じる濃い陰を、駆動する機関が推進させながら生み出していく。地面に広がる影へ飛び込んだ様は、獲物を求める猛禽のようだ。
 直後、ヤツハの足元から、栓を抜いたように影が噴き出した。
 

「きゃあっ!?」

 

 視界が黒く染まり、彼女の長髪と袖が暴れる。身を引き裂かれるということはなかったが、守りとしていた結晶たちが次々とひび割れ、力を失ったように塵と化していった。

 

──エピソード6-2:瑞泉で自分を探して(中篇)より──

  なにやら絡繰ですごいことをしているみたいですが、注目すべきは赤字の部分、自分のオーラを砕いている描写です。「いいでしょう!」で有名な例のシーンと同じく何かしらの付与札をオーラから納めたと考えていいでしょう。ヤツハのオーラが塵と化す描写からおそらく遺灰呪をあくせらーから使用しています。この後ダストを利用してリーサルを取るためオーラから納めたのは理にかなった判断と言えます。魔食・影の翅・りふれくたであくせらーの機巧もバッチリです。

使う全力カードによって起きる現象が違うから描写が難しそう

 そして、無防備となったヤツハに向けられる、次なる一撃。

 

「はぁッ!」

 

 影の隙間から見える青雲が、右の手を突き出した。それに呼応するように、彼に従う影が漆黒の波動として放たれ、痛打の意思を伝えるべくヤツハめがけて飛来する。
 終局を間近とした彼女にとって、それは致命の一撃に等しい。たった一つでも結晶が耐えてくれさえいれば防げただろうに、周囲に舞う破片は形を失っていくばかり。今までじわじわと蝕まれてきた守りへの余裕は、ここに至ってついに決壊を迎えたのだった。

 

──エピソード6-2:瑞泉で自分を探して(中篇)より──

  遺灰呪でオーラを全て失ったヤツハへ無慈悲な黒き波動。「致命の一撃」とありますので、ヤツハのライフはもう2しか残っていないのでしょう。仕込みが難しそうなあくせらー遺灰呪からの攻撃直撃を実現する青雲の腕も見どころです。

意志が手札に残っていれば防げたのだが...

 しかし、意思を灯すヤツハの瞳は濁ることはない。
 結晶による守りでも、体捌きによる回避でもなく、彼女が選んだのは己の力。

 

「だめぇッ!!」

 

 悲痛な叫びが、拒絶を訴えた。
 瞬間、ヤツハの盾となったのは、彼女が操る鏡だ。主の意思に導かれるように波動の射線上に立ちはだかったそれは、敵意を受け入れるかのようにあるはずのない星空を映し出した。
 そして宙を渡りきった影は鏡を砕くことすらなく、鏡面に触れた途端、勢いはそのままに向かう先だけを反転させる。矛先は無論、影を放った青雲本人――星々のような輝きに侵食された形ある影が、諦めないヤツハの想いを乗せて舞台を駆ける。

 

──エピソード6-2:瑞泉で自分を探して(中篇)より──

  そのまま食らうわけにはいかないため対応切札の双葉鏡の祟り神を使用するヤツハ。黒き波動は打ち消され、反射されて青雲を襲います。

反射した攻撃は星の輝きに染まるらしい

 だが、強いられた行動が状況を改善させることはない。ヤツハは危険な攻めをしのぎこそしたが、放った反撃は青雲に容易く防がれてしまう。
 砕けて塵と化した結晶を、青雲は掴み取る。
 それこそが、求めていたものであると。

 

「灰よ、塵よ――」
「……!」

 

 離れた位置で彼が降り立った地表面には、これまでの激戦によって、そしてたった今、ヤツハが力の礎にして散っていった数多の桜花結晶の残滓が、鈍い煌めきを放つ雲海のように溜まっていた。
 それらは、青雲の呼びかけに答えるようにざわつき始める。
 あちらこちらから滲み出た影が、紙に墨を振りまいたかのように、戦場に暗く染み渡っていく。侵蝕の果てに待つ終わりを、ここに迎えるための舞台が整えられていく。
 そして青雲は、拳に力を込めてこう告げた。

 

「――集いて、呑み込めッ!」

 

──エピソード6-2:瑞泉で自分を探して(中篇)より──

  黒き波動だけは凌いだのですが、それも青雲の狙い通りでした。祟り神を使用した結果ヤツハのフレアはダストに送られ、灰滅の足しにされてしまいます。ヤツハのライフは残り2しかないため、リーサルになります。

決めることができればかっこいい切札No.1(当社比)

  以上で、ヤツハvs青雲の決闘は終わりです。弱い者いじめに見えなくもないがリーサルの動きが鮮やかな戦いでした。灰滅リーサルを狙う時の一つの動きとして「対応切札を切らせて相手のフレアをダストにする」というのがあるそうですが、そのためにはしっかり優勢を取って対応を切らざるを得ない盤面にする必要があり、それをウツロ/クルルの組み合わせで達成した青雲の腕に感服です。どうすれば実現できるのか私には皆目見当もつかない

 

  神語りの決闘録では不定期にこのように公式小説に登場した決闘シーンについて勝手に考察/解説していく予定です。これを見て「面白そう」と思った方は、ぜひ公式小説を読んでみてください。それではまた次回。

 

画像素材:

https://main-bakafire.ssl-lolipop.jp/furuyoni/na/rule.html

(ふるよにコモンズ/BakaFire,TOKIAME)